織り作家の想い

織り作家の想い

どこまでも手仕事の、土佐紙布

いしはらさんとのご縁をいただき、土佐と越前という土地を結んで、「土佐紙布」を作らせていただいています。植物であるコウゾが土佐で紙に漉かれ、越前和紙の産地へ運ばれ、私が糸にして、機(はた)を織るという、長い旅です。私は和紙で織る作品をふだんから手がけています。典具帖紙は、これまで私が扱ってきた和紙よりも軽くて薄く、やわらかさもあると感じます。

作品は手紡ぎ・手染め・手織り。手紡ぎは素材の風合いが生きていますので、定規で引いた線と、手で引いた線のような違いが糸に出ます。まず典具帖紙を四つ折りにして切り目を入れ、細長くつながった状態にして、糸車でよりをかけながら糸にするという、昔ながらの方法です。

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イメージを追って手を動かす

土佐紙布は、木綿を経糸(たていと)に、和紙を緯糸(よこいと)にして織ります。糸は木綿も和紙も自分で染めます。糸を紡いだ後、糸車に巻いたかせを染めるのです。私は草木染めが多いですが、色が長くもつように、青などは化学染料も使い分けます。土佐和紙も白に見えると思いますが、作品として調和させるため、ごく薄い生成りに染めています。軽く、そして淡く。そのひと手間にまた、風合いが宿るのです。

設計図を描かず、色を決めた後は心のおもむくままに織っていくのが私の作品づくり。土佐紙布はやわらかくて、あたたかいイメージがあります。作品は一つのイメージなので、素材としての土佐和紙だけを強調せず、全体としてのバランスを大事にします。頭に浮かんできたイメージを追って手を動かしていき、紙も、そのなかで生かされます。

越前は代々女性が紙を漉いてきた産地で、伝統もモダンも発信力が強いです。紙祖として今立の里の岡太(おかもと)神社に祭られる川上御前は女神さまですし。そして土佐の高知も、はちきんと言われ、男勝りの女性が元気な土地柄だそうですね。お話をいただく前に、偶然ですが四国遍路に何度かお訪ねしていて、土佐の海の青さが印象に残っています。


 

自分を探し、歩んできた道

織りを始めたのは33歳の時で、京都西陣のつづれ織工房へ織り子に入り、まったくのゼロから仕事を覚えました。最初は糸をつなぐのに半日かかったほどです。やがて、決められたデザインに飽き足らず、また一歩を踏み出しました。

40代前半、島根県安来市へ。出雲絣を農家の女性たちの織物から創出された青戸柚美江先生のもとに弟子入りしました。女性のお弟子さんを募集していたのです。昔はどの家でも家事の合間にしていた機織り。農業や暮らしと直結している、生活の布。そのシンプルさに憧れて、紙の糸紡ぎも覚えました。紙は「性に合った」のです。進む道が定まった島根での2年間は、技術を身に付けるだけでなく、幸せな日々でした。

そして、島根から越前に帰ってきた時、地元に越前和紙があることに気づきました。そういうものかもしれませんね。


(一社)越前市観光協会ホームページへ